人間誰だって年を取るんだ、という当たり前のことを
実は本当のところ本気では信じていなかった。もっというと
自分が年を取るなんて、思っていなかった。
でも鏡に映る自分の顔が、年々自分が知っている自分の顔じゃなく
年配で覇気のない男の顔がそこに映っているのを見て
誰だこいつ、と驚いたことがある。
小学校のころ、図書館で科学の百科事典の巻末に、年表が付録としてついていた。
宇宙の誕生、銀河や太陽系の誕生、地球の誕生、人類の誕生から現代、はては当時まだ到来していなかった未来のことまで書いてあった、面白い年表だったので、
しょっちゅうそれを読んで眺めて、未来を想像するのが好きだった。
自分が生まれる前の時代、自分が死んでもうこの世に存在していない時代。
僕はどんな風に大人になって、どんなふうに年を取っていくのだろう。
当時の僕は30代程度までは、ある程度自分の人生を想像していたように思うけど、
それも今思い返せば、大方外れていた。
その30代もとうの昔に過ぎ去り、当時の僕が想像することができなかった年齢に、今なっている。
鏡の中に映る自分は、まぎれもなく今の自分。
人生が後半に差し掛かって、自分も歳を取るんだという現実を目の当たりにして、
今初めて、それを受け入れようとしている。
鏡の中の自分に、ふと聞いてみる。
僕は僕の人生のどのあたりを、今歩いているのかな。